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須田一政 Issei Suda 写真集「煙突のある風景」特装版

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須田一政 写真集「煙突のある風景」特装版

発行:Place M
発売:2019年4月29日
制作:TokyoLightroom
装丁:小松透
英語翻訳:ハワード・ワイツマン
印刷:株式会社山田写真製版所
製本:株式会社渋谷文泉閣
ISBN:978-4-905360-26-1
価格:税抜50,000円

オリジナル8x10inchゼラチンシルバープリント付き
通常版の表紙と特装版の表紙のどちらかを選べます。

さよなら煙突
高度成長以前、東京にビルが乱立する前の遠い昔 ― 煙突は高かった。 子供の頃は、見上げるほど大きなものに畏怖を感じるものだ。そしてその畏怖は憧憬 へとつながっていく。天を突きさすようにそびえ、もくもくと白煙を吹き出す塔は、 その象徴とも言える存在であった。 父が戦後からスレート会社を営んでいたので、 私の馴染みは家庭用の小さな煙突だった。自分の手が届かない、工業用の巨大な煙突 にことさら気を引かれたのにはある種のコンプレックスも含まれていたのかもしれ ない。 写真一筋に生きるようになってからも、視界に煙突があると反射的にカメラを向け ていた。幼年時代の憧憬は、時代の移ろいの中でイコンような輝きを放つようになっ ていったのである。
私にとって、煙突のベスト1は「お化け煙突」だ。 千住にあった火力発電所の4本の煙突につけられた通称で、 見える本数が角度によって違うことが皆の噂になって いた。タネも仕掛けもないそれを、「お化け」と名付けた当時の人々の感性はなかなかのものだと思う。昭和 年に取り壊され、今では記憶の中にしか現れない正真正銘のお化けになってしまった。
「煙突のある風景」というタイトルにもそのお化け煙突への思慕が隠れている。この シリーズに限らず、煙突は私の風景写真の常連と言える。ただ、煙突のある...と銘打ったにしては、このシリーズにはその姿が少ない。結局 、「煙突のある風景」は煙突が 高かった時代への郷愁だったのだ。当時の私がそれを全肯定するとは思えないが、数十年経た私にはそう見えてならない。
最近は技術が進み、都内のほとんどの煙突からは煙が出ない。白煙の正体も水蒸気 だったりする。火葬場の火葬炉も電子レンジ化して、家族で煙を見送る光景もすでに ない。果たして私などは、煙の力を借りずに天国へ上ることが出来るのかが気になる
ところだ。
いつか煙突という言葉も消える日を迎えるのだろうか。「煙突のある風景」は間違 経て 年にフリーとなる。 年「風姿花伝」により日本写 いなく終焉へと向かっているのである。
2019年 平成最後の春に
須田一政

プロフィール
須田一政(すだいっせい) Issei Suda
1940年東京・神田生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。演劇実験室・天井桟敷(寺山修司主宰)専属カメラマンを経て71年にフリーとなる。76年「風姿花伝」により日本写真協会賞新人賞、83年「物草拾遺」等により日本写真協会賞年度賞、85年「日常の断片」等により東川賞国内作家賞、97年「人間の記憶」により土門拳賞、2014年「凪の片」等により日本写真協会賞作家賞受賞。2019年3月7日千葉市にて逝去。

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